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中国侵略の証言者たち/「認罪」の記録を読む/岡部牧夫、荻野富士夫、吉田裕 [本]

小麦の収奪作戦に参加していた彼は、ある老婆が家族の生命線となる最後の小麦袋を何としても離そうとしないのを見て、殴りつけて奪った。するとその老婆は血だらけの顔でにらみつけてきた。「なんだクソ婆め。その目はなんだ。悔しいのかこの虫けらめ」、私はまた軍靴で顔を蹴りつけた。そして見せしめのために、皆の前で殺して、池の中にたたきこんだのだ。そうだ、私は正に鬼だった。鬼の所業なら鬼の所業のように書かなければ、この老婆は許してくれない。私はとりつかれたように、前に書いた原稿のスキ間に書き加えていった。(p37)

所謂インテリ階級者を「軍事行動による厳重処分」を以って処理することは、目前の法治尊重理念による国際慣例照らして憚るところがある関係により、これを糊塗欺瞞する為に、唐突に「厳重処分」に付することを避け、一応裁判所の審理にかけ、合法化を装う手段とすること。(p74)

一、本作戦に於て八路軍に対し徹底的殲滅を期すべし、之れが為行動地域内にある八路軍に対し徹底的打撃を加うるの外、其根拠地を覆滅し其利用されるべき一切の物件、施設は根底より壊滅し、或いは焼却し、或いは押収すべし。又根拠地にある住民に対しては凡て八路軍に協力せるものと見做し処断すべし。
二、各大隊は挺身斬込隊を編成し、八路軍攻撃に利用すべし。之に対しては便衣を着用せしむべし
三、資源たるべき物資又は糧食は凡て押収し数量大なるときは速やかに報告すべし
四、俘虜は殺害し「戦果」として計上すべし
五、ガス使用の権限を各大隊長に附与す (p112)

強姦は、住民虐殺などと異なり、それ自体が命令によって行われるものではなかった。強姦はまさに自分の意思によって引き起こされた犯罪であり、その罪を言い逃れることがもっとも難しいと戦犯たち自身も感じていたのである。一方で、兵士は強姦した相手の女性を殺害することが多かったため、自分さえ黙っていれば、告発される可能性もそれほど高くないとも考えられた。そのため強姦を自白するということは、自分の罪を洗いざらい自白する最終段階とも言えたのである。供述書で自らの強姦についてふれているのは、それ自体が認罪の深さを示しているともいえる。(p133)

戦犯たちが、思想的な葛藤を乗り越えて、「みずからを極刑に処して欲しい」と叫ぶようになるまで、自分の罪を深く反省して綴られたのが、自筆供述書であった。ここから私たちが学ぶべきことは、決して少なくないはずである。(p136)

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